新日本プロレスワールド 「飯伏幸太 ゴールデン・スターのひみつきち」

sayokom2015-07-17


新日本プロレスワールドで飯伏幸太選手のオリジナル動画、「#13 ゴールデン・スターのひみつきち」という動画を見た。このNJPW Documentaryというシリーズは選手のプライベートな日常を見せてくれるシリーズで、真壁選手が地元に帰って同級生とケーキ屋さんに行ったり、後藤洋央紀選手が酔っていたり、内藤哲也選手がお父さんと語り合っていたりと選手の柔らかな素顔が垣間見えて面白いのだが、飯伏選手はたったひとりであらわれる。

その15分の動画の一番最初からまずあまりに飯伏選手らしくて最高。そして、カメラを通して語りかけているディレクターとの関係が親密であることがわかる。

どうやらいまとても忙しいらしい飯伏選手の日常とはつまり、ひとりで行っている練習のことである。よく知られていることではあるが飯伏選手はデビュー以来ほぼずっと、どの団体の合同練習にも出ずに単独でプロレスの練習をしてきた。語られるその理由もとても飯伏選手らしい。そしてかつてベスト・オブ・ザ・スーパージュニアで初めて獣神サンダーライガー選手と対戦した時に「もっとグラウンドレスリングを身につけた方がいい」と忠告された飯伏選手ではあるが、じゃあどうやってグラウンドの技術を身につけたのかもまた、とても飯伏選手らしい。

たったひとりで、よく公開練習などの映像では見たことがあるあの千葉のアマチュアプロレスの道場で、もくもくと飯伏選手はまずストレッチをする。ああ、飯伏選手もちゃんとストレッチするんだ!という新鮮な驚き。むちゃくちゃをやっているようでいて、当然だけれど自分の身体はきちんとケアしている。そして自分の身体がいまどういうダメージを受けているかももちろん自分でわかっている。

ひとりで黄色いストレッチボールを相手に練習を繰り返す姿は、まるで砂場で遊ぶ子供のようでもあり、求道者のようでもある。確かに子供の頃ってたいした道具がなくても砂場や原っぱで永遠に遊べたし、ひとりでも時間があっという間に過ぎたものだ。きっとあの頃私たちが持っていたピュアな気持ちを飯伏選手はプロレスに対して永遠に持ち続けているから、私たちは飯伏選手に惹かれるんだろう。そしてこの黄色いストレッチボールが伊橋剛太選手に見える、ということも付け加えておきたい。

どうやって飯伏幸太のあの誰にも真似出来ない動きが生まれるのかが、解き明かされる。それは意外にも地道で、急に空から降ってくるようなものではない。天才というのは「努力することが出来る天才」のことを言うのだ、と誰かが言っていたけれど、本当にそうなんだと思う。あの生まれっぱなしみたいな飯伏幸太だけれども、何もしなくても「夢が人の形をしている」存在になり得たわけじゃないのだ。

そして、撮影しているスタッフを気遣う場面に、グッとくる。ただ天真爛漫で天然で、という側面で語られがちな飯伏幸太という人の、優しさ。

この「ひみつきち」で飯伏幸太は作られている。この動画を見ると、私たちがよく知る飯伏幸太と、知らない飯伏幸太がふたり、いる。デビュー前から、そしてプロレス界を駆け上がりDDT新日本プロレスの2団体所属の時代の寵児になった今も、この道場を飯伏選手に好きに使わせてくれている人がいることに心から感謝すると同時に、そんな単独行動を許してくれた所属団体の人たちにも感謝したい。そして今回の動画は「前編」ということなので、「後編」もとても楽しみだ。

新日本プロレスワールド NJPW Documentary #13 飯伏幸太 ゴールデン・スターのひみつきち
新日本ワールド

追伸。新日本ワールドの別の番組で、飯伏選手が夢として
『2020年の東京オリンピックの開会式でプロレスをやる。』
と語っていたことを知った。最高すぎる。