not elegant から6年。棚橋弘至×ケニー・オメガ

 

9月26日、新日本プロレス公式のポストに「棚橋弘至×ケニー・オメガ」という文字が見えた時、まさかという思いで心臓がドキドキしてまともに見られなかった。心がかき乱される、封印していた思い。

今から6年前、記者会見の席上で棚橋選手はケニーのことを「ケニーのプロレスには品がない」と言った。通訳の方はそれを「not elegant」と訳した。その言葉が強烈すぎた、強烈というかそれを通り越してショックだった。

棚橋選手は自分が発する言葉の責任の重さや影響力をわかりすぎるほどわかっている人だ。その棚橋選手が発した「品がない」はなぜだか私に深く突き刺さった。ケニーも初来日からずっと見てきたし、棚橋選手が自分の全てをプロレスに捧げてきた道のりもずっと見てきた。ふたりとも大好きで、尊敬する選手たちだ。その会見は2018年10月9日に行われ、翌年の2019年1月4日東京ドーム大会の、IWGPヘビー級選手権がケニー・オメガvs棚橋弘至に正式決定したことから行われていた。

その時の両者の立場がどんなものであったとしても、ただの敵対している同士のタイトルマッチ、という言葉に収まらない異様な雰囲気だった。プロレスは相手へのリスペクトや信頼関係があって成り立つ、という言われ方はよくするけれど、この日の壇上は試合以前に相手を否定する言葉が飛び交った。そんな中で会見の序盤に発せられたのが、品がない、not elegant だった。

それ以前にもそれ以降にも、私にとっては対戦相手を表するこれ以上ネガティブな言葉は思いつかない。特に、ケニーのようなプロレスラーにとって not elegant は一番言われたくない言葉だっただろう。おそらくケニーは相当に心外だっただろうし、ただ安全なところから見ているだけの私にもなぜか大きなトラウマの言葉になった。

年が明けて1.4ドームは40分近い激戦の末、棚橋選手が4年ぶりにIWGPヘビー級王者になった。そしてケニーは日本から去った。あれから5年9ヶ月。いや、私にとってはあの会見から6年といった方がしっくりくる。

動画のタイトルには「再会」とあった。再び何かが始まるのか。それともきちんと終わらせるための再会なのか。また私は心がかき乱されるのか。かき乱されるとしても、見ないわけにはいかない。