映画『2046』。

昨日の日付を間違えたもので今日の日記がどこにあるんだか訳わからなくなってきましたが、わからないついでに『2046』について書いておこうと思います。ちなみにわたくしは先週土曜日23日の公開初日に、錦糸町楽天地で観ました。キムタクが出てる映画だろー、そんなの興味ないよーという方は読み飛ばして下さい。これから観るつもりでネタバレしたくない方もパスした方が良いです。わたくし映画について語るべきものなど何も持ち合わせていないのですが、ウォンカーウァイ:王家衛だけは全部観ているので、ちょっくら語らせて下さいな。
5年以上も前から制作の話があって、キムタクが出るとかいうので日本でもずいぶんと話題になってましたが、待てど暮らせどちっとも完成したという話が聞こえてこない。でも待って良かったよ! わたくし的には大好きな映画でした。
まず、映画始まってすぐ、泣きました。いや泣くような映画じゃないんですよ全然。しかも泣いたのは出演者のテロップで。トニー・レオンコン・リーと出演者の名前が出てくるのですが、それだけで何か胸がいっぱいになってしまったのです。ああ、よくぞ完成した、王家衛監督ありがとう!みたいな得も言われぬ感動。香港・中国映画に詳しくない方にはちっともピンと来ないと思うのですが、これ凄いキャストなんですよ。トニー・レオン木村拓哉コン・リーフェイ・ウォンチャン・ツィイーとカリーナ・ラウとチャン・チェンマギー・チャンが出てくる映画っていうのは、例えて言うなら永瀬正敏木村拓哉チェ・ジウ椎名林檎BoA鈴木京香ウォンビン黒木瞳が出てくる映画といえばいいでしょうか。あんまり凄くないかこれじゃ。
で、映画始まるといきなり『イノセンス』みたいな思いっきりCGの未来都市で凹みますが、あまり気にしなくて良いです。王家衛がSF?!と当初ファンを不安に陥れる情報が飛び交っていましたが、中身はいつも通りの王家衛映画です。映画の宣伝文句に「全世界衝撃の近未来ラブストーリー」とありますが、あまりそこは強調する必要ないんじゃないかしら。わたくしは何だか、これまでの彼の映画の集大成を観る思いでした。懐かしい台詞、懐かしい仕草、懐かしいシーンがたくさん出てきます。「足のない鳥」という台詞で『欲望の翼』のヨディを思い、酔ったカリーナ・ラウのハイヒールを脱がせるシーンで『恋する惑星』のブリジット・リンを思う。電話口で楽しそうに喋るフェイ、カウンター越しに向かい合うフェイとトニー・レオン、下着姿のトニー・レオン、これみんな『恋する惑星』に似たようなシーンが。電車の中の傷ついたキムタクは、『欲望の翼』のヨディ。モノクロのタクシーの中のシーンは『ブエノス・アイレス』。カリーナ・ラウの役名も『欲望の翼』のままだし、とにかく王家衛映画を観ている人なら胸がキュンとなるシーンがいっぱい。
実世界と小説の中の世界が入り交じり、しかも相変わらず時間軸もまちまちな構成なのですが、近未来のCGシーン、アンドロイドという設定もそれほど違和感なかったです私には。絵面は確かにSFなんだけど、その中で描かれているのは喪失感、叶わない思い、切なさ。圧倒的に美しい画面、美しい役者さんたちにとことん酔いました。でもチャン・チェンはいくらなんでもあれだけの出番じゃ可哀想だろう・・・。
失われた愛を求めて「2046」に行く、というストーリーではあるけれど、「2046」っていうのは場所の名前でも年号でもなくて、結局届かない叶わない世界のことなんだろうか。ラストシーンのトニー・レオン同様、これから王家衛がどこへ行こうとしているかがとても気になる。でも王家衛が次のシーンに進むためには、「2046」を撮らなければいけなかったんだと思います。