旅に出る理由があった小沢健二と旅に出られなかったタモリ

sayokom2014-03-20

オザケンこと小沢健二さんの16年ぶりの笑っていいとも出演に関しては、生放送を凝視していた時には「あっボーダー」とか「あっ眼鏡」とかそういったことばかりに興奮していまひとつ冷静な気持ちでいられなかったので、録画したものを改めてひとりで見てみたらものすごくいろんな感情が揺さぶられ、有り体に言うとものすごく泣けました。

これから録画を見ようと思っている人はここから先は読まない方がいいです。出来ればご覧になった後にまた読みに来て下さると嬉しいです。

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 飯伏幸太が見る新しい夢のかたち

sayokom2013-10-08


プロレスラーに望むことは何ですか、と聞かれるたびにこう答えてきました。

「レスラーが怪我なく、自分の望む形でリングに上がり続けること。」

今回、飯伏幸太選手が異例のDDT新日本プロレス両団体所属という発表を受けて、改めてこのことを強く感じています。

何のバックボーンもなく、当時はちょっと変わったいちインディー団体だったDDTでデビューし、さして特別扱いもされないまま新人時代を過ごし、その身体能力で少しずつ知られるようになり、他団体に呼ばれ、メジャー団体のリーグ戦に出場し、優勝し、ベルトを巻き、路上プロレスというジャンルを切り開き、プロレス大賞に毎年名前が挙がるようになり、DDTのゴールデン☆スターからプロレス界全体のゴールデン☆スターになったいぶっさん。

新日本プロレスが緊急会見を開くといい、その場に新日本プロレスの菅林会長と飯伏選手、更にDDT高木社長の3者が並んでいるのを見た時、ああ、ついにこの日が来てしまったのかと思いました。DDT飯伏幸太は、新日本プロレス飯伏幸太になってしまうんだなと。ここ数年、いつかそんな日が来てしまうんじゃないかと恐れ、いやそれが飯伏選手のためになるんだったらそれも仕方ないのかなとか、思いあぐねていたその日が来てしまったのかと。そう覚悟したDDTファンは多かったのではないかと思います。

しかしそうではなかった。高木社長の口から出たのは、「飯伏幸太DDT並びに新日本、業界初の2団体所属の選手として今後活動していくことになりました」という言葉でした。最初、よく意味がわからなかった。二つの団体に所属? それってどういうこと?

その詳細は記者会見『飯伏幸太選手が、史上初のDDT&新日本プロレス “2団体所属選手”に!! 10月14日両国大会で所属初試合!!(会見全文アップ!!)』で明らかになった通りです。これまで通りDDTの試合には全部出る。そして新日本のビッグマッチにも全部出る。興行はなるべくかぶらないように今後調整する。DDTではこれも初の3年複数年契約、新日本は単年契約。中澤マイケル選手帯同はひとまず却下。

何が変わって何が変わらないのか。それはきっと、今後おいおいわかっていくのだと思います。並んだ条件を見ているとそれほど変わらないのかもしれないけれど、菅林会長が「見てみたい」と言っていたとおり新日本の会場で赤いライオンジャージを身につけている飯伏選手を見かけたら、たぶん複雑な気持ちになると思う。それは正直な今の自分の感情です。

でも、飯伏選手は新日本所属を選んだと同時に、DDTを去ることも選ばなかった。大社長も<俺様の団体経営学EX>35回 異例の飯伏幸太2団体所属についてで明らかにしていますが、今回飯伏選手は何より、DDTのファンのことを気にかけていた。自分がDDTを見捨てていくと思われるんじゃないか、あいつメジャーにいっちゃったんだな、そう思われるんじゃないかということに心を痛めていた。もちろん新日本プロレスに完全移籍して全戦参戦することへの自信がなかったという部分もあるし、DDTにいないと出来ないこと(路上プロレスとか)ことがあるからというのもあるけれど、自分をずっと応援してきてくれたDDTファンのことは裏切りたくない、というのも真意なんだと思う。あまりそういうことを言わない人ではあるけれど。

今回の記者会見を受けて思い出したのは、今年のDDT両国大会初日のメインイベント、男色ディーノvs飯伏幸太の試合後の2人のやり取りです。

男色:飯伏君に質問があります。何でプロレスやってるの?
飯伏:楽しいからです。
男色:奇遇ね。私も同じよ。じゃあもう1つ。何でDDTにいるの?
飯伏:好きだから。大好きだからです。

私はこの時のこの言葉を信じている。そして、DDTという団体をここまで育て上げ、飯伏幸太という繊細な天才を守りそして世に出し、門外不出のオカダ・カズチカを両国に上げて飯伏との対戦を実現させた高木三四郎という人の手腕と交渉術を信じています。

飯伏は過保護だ、何で飯伏ばかりが特別扱いなんだ。そういう声もあると思います。でもそれには正面切って答えたい。それは飯伏が特別だからです。飯伏幸太というプロレスラーが、自分の身ひとつで築き上げた信頼、驚き、感動、震え、畏怖、それが彼をここまで特別な存在にしているのです。もちろんそれと引き替えに失ったこともあるだろう。でも飯伏幸太が明日を顧みず飛び続け走り続けプロレスに身を挺してきたからこそ、彼を業界一の団体が欲しいといい、そしてDDTはその業界一の団体と対等に交渉出来るまでの地位に登り詰めた。

飯伏幸太の今回のこの扱いについて、こういう道も開けるんだ、という一つの道標になればいいと思うし、何だふざけんなよ、という刺激になってもいい。そしてそんな夢を持ったり悔しがってる選手を、それぞれのファンが応援すればいい。

「自分の望む形でリングに上がること」という私の願いは、そもそもプロレスラーの目標が人それぞれであるというところから始まっています。これまで、インディーからメジャーに旅立っていった選手もたくさんいた。俺はメジャーになるんだ、厳しい生存競争と過酷な巡業を勝ち抜いてトップに立ちたいんだ、そういう選手は是非それを目指して欲しい。いやそうじゃない、俺は小さな団体でもいいから、ファンに近いところで毎日プロレスをしていたいんだ。地方のアットホームな会場でおじいちゃんや子供達を喜ばせたいんだ。それもとても気高いことです。

DDTにいなければ出来ないこともある。そしてもちろん、新日本プロレスでなければ叶えられない夢もあるだろう。飯伏幸太が今回、DDTを選び、そして新日本プロレスを選んだのであれば、私は彼のその行く道をこれまで同様追いかけるだけです。

さくらえみ選手がかつて飯伏選手を称して言った、「夢が人の形している」の夢が、またひとつ先へ進んだ。これからもまた、飯伏幸太の見る新しい夢を、追いかけていける喜び。

もうちょっと、いやもっと先まで。飯伏幸太が目指す高みを、この目で見たいと思います。

若き章子怡の舞踏姿。

で、前回も書いたのですがチャン・ツィイーの所作の美しさと身体能力はやっぱり子供の頃からの舞踏にあるんだろうと思います。8才からバレエを習い、舞踏学校に進学。学校では中国の民族舞踊をみっちり習ったらしい。そんな頃の映像がどうしても見たくて探してみました。
1994年ですから彼女が15才の時の映像です(それにしては大人っぽく見える)。この孔雀舞というのは中国の傣族の伝統的な踊りらしく、世界的に有名な舞踏家ヤン・リーピンも踊っている。指の先の先まで行き届いた表現力、背中の圧倒的な存在感。彼女がどれだけの鍛錬を積み、踊りに賭けているのかがよくわかる映像です。ちなみにチャン・ツィイーはこの演目でこの年のコンクールで優勝を果たしています。

これは更に若い頃の映像だと思われます。女性の振り付けとしてはかなり奇抜に見える踊りですが、苗族の踊り、と最初にクレジットが出ているのでこれもそういった少数民族の舞踏をモチーフにした踊りなんでしょう。2曲目は中国の伝統的な踊りだなあっていう気がします。

チャン・ツィイー自身、ダンスをやっていたからカンフーの動きを覚えることはさほど難しいことではなかった、と語っています。ダンスから学んだことは「意志を強く持って諦めるな、ということ」と彼女は言う。これからもばんばん踊って欲しいです。

追記:このメイキング映像を見ると、それぞれのカンフーの流派の違いがわかって面白い。

相手に近い位置で常に闘うトニー・レオン詠春拳、円形のなめらかな動きが優美なチャン・ツィイー八卦掌(師匠も女性が多い)、直線的で荒々しいチャン・チェン八極拳。ちゃんとそれぞれのキャラクターに合った流派を選んでいるんだなと思った。それから柔軟が鬼。

2度目のグランドマスター。

公約通り2度目の「グランド・マスター」を見てきました。まあレディースデーにかこつけて観ているので偉そうなことは言えないですが。
2度目ともなると前回よりも余裕があり、カンフーの流派の違いとか馬三のホンモノ感(演じているマックス・チャンはモノホンの武術家で全国大会でも優勝)とかがややわかって良かったです。相変わらず蛇のスープのくだりと白バラ理髪店のあたりはよくわからないっちゃわからないんだけど。
あとチャン・ツィイーの衣装が綺麗ですね。古き良きレースとか、シンプルな髪飾りとか。これはさすがのウィリアム・チャン仕事。葉問の奥さん役の韓国の女優さん、ソン・ヘギョも横顔が美しい。全然喋らせてもらえないんだけれど毅然とした美しさが良かったです。

それから猿を連れてるチャン・ツィイーの従者役の人がほんといいんだよなあ。ゴン家に忠誠を誓う彼はじめ、ゴツい男たちを連れてバーン!って扉を両手で開けて駅構内をずんずん進むチャン・ツィイーのカッコ良さ。晩年彼がいなくなってしまったから、彼女も堕落してしまったんだろうと思うと寂しい。あとやっぱり猿可愛い。

グランド・マスターを見た。

王家衛監督の映画、グランド・マスター(原題一代宗師/THE GRANDMASTER)を見ました。ブルース・リーのお師匠さんとして知られる武術家、イップ・マンを主人公とした王家衛としては初のカンフー映画です。王家衛が単語登録されているくらいウォン・カーウァイ映画は全部見ているわたくしとしては、公開から3週間も経って見に行くというのはかなりのていたらくではあるのですが、一応感想などを書いておこうと思います。

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 2012年度東スポプロレス大賞発表!

サムライTVのHP内にあるコラム「猫耳アワー」がサーバーエラーで飛んでしまったようなので、緊急措置としてこちらに同じ文章をupしました。

皆様お待たせいたしました。2012年度東京スポーツ新聞社制定「プロレス大賞」全受賞者の発表です(敬称略)。

最優秀選手賞 オカダ・カズチカ新日本プロレス
年間最高試合賞 オカダ・カズチカvs棚橋弘至新日本プロレス6.16大阪府立体育会館 IWGPヘビー級選手権試合)
最優秀タッグチーム GET WILD 大森隆男・征矢学組(全日本プロレス
殊勲賞 森嶋猛(プロレスリングNOAH)
敢闘賞 アブドーラ・小林(大日本プロレス
技能賞 中邑真輔新日本プロレス
新人賞 橋本大地ZERO1
女子プロレス大賞 愛川ゆず季(スターダム)

選考委員長に東スポ柴田惣一さん、そして今年は特別選考委員として初めて、漫画キン肉マンの作者、ゆでたまごこと嶋田隆司さんが参加されました。その他東スポの運動部記者、写真部、各スポーツ新聞社担当者、専門誌編集長に評論家、ライター及びキャスターを加えた計21人の選考委員が集まり、今年の選考会議は開催されています。

◎最優秀選手賞
今年も最優秀選手、つまりMVPから選考がスタート。推薦したい選手がいる委員が挙手にて選手名を挙げ、その推薦理由を述べます。

オカダ・カズチカ
「ここ数年この業界を引っ張ってきた棚橋を予想もしなかった形で引きずり降ろし、ベルト奪取。試合内容も良く、新しい時代を切り開いた」
「とにかく若く、見栄えもする。新しく若いファン層を呼び込んだ」
「専門誌の表紙を年間で8回飾り、文字通り業界に金の雨を降らせた」
「ゴルフ界で石川遼が新風を吹き込んだように、プロレス界に新しい風を吹かせた」
「ただ自分の言葉がない。彼自身の言葉で語られるビジョンが欲しい」
「来年以降、マネージャー役がいなくなった時に本当の真価が問われるだろう」
「今年の1.4の時点では誰にも現在の姿を想像できなかった。もちろん周囲のバックアップはあったにせよ彼自身がそれに応えるだけの努力をした」
棚橋弘至
「ベルトを1度オカダに明け渡す形にはなったが、去年と何ら劣らぬ安定感があった。オカダの躍進は棚橋がいたからこそ」
森嶋猛
「ケガ人が相次ぐNOAHの中でひとり、GHC王者として団体を引っ張った」

以上3人の選手を推薦する声が挙がり、議論の末で投票へ。

オカダ・カズチカ 16票
棚橋弘至 2票
森嶋猛 3票

ということで、圧倒的多数でオカダ・カズチカ選手が2012年のプロレス大賞最優秀選手に選ばれました。ある程度予想されていたことではありましたが、予想以上の安定感と期待感でした。そのキャラクターゆえ「もっと彼自身のビジョンが欲しい」という声も出ましたが、プロレス界に新しいスターが誕生したことは間違いなく、オカダ選手について議論しあう時間の長さがそのまま、彼が最も価値のある選手であることを物語っていたように思います。さて、授賞式のスピーチでは彼が自分の言葉で喋ってくれるでしょうか?それともやっぱり外道さんかな?

◎年間最高試合賞
続いてベストバウトです。エントリーされる試合が非常に多いのが近年の特徴なのですが、今年も多様な価値観の試合が並び、プロレスの幅の広さをそのまま物語っています。
エントリー順に、推薦試合とその理由を。

・10.8 棚橋弘至vs鈴木みのる新日本プロレス両国大会 IWGPヘビー級選手権試合)
「プロレスvsUWFの緊張感を見せてくれた」
・2.12 棚橋弘至vsオカダ・カズチカ新日本プロレス大阪大会 IWGPヘビー級選手権試合)
「MVPにもなったオカダ。2012年を象徴する試合」
・8.18 飯伏幸太vsケニー・オメガDDT武道館大会 KO-D無差別級選手権試合)
「他の誰にも真似出来ない、唯一無二の試合だった」
・5.7 太陽ケアvs諏訪魔全日本プロレス後楽園大会 CC決勝戦
「ケアのベストバウト。諏訪魔の怪物性をうまく引き出した上で勝つ」
・6.16 オカダ・カズチカvs棚橋弘至新日本プロレス大阪大会 IWGPヘビー級選手権試合)
「耐える棚橋を応援したくなった。2月よりもオカダが成長していた」
・8.26 秋山準vs船木誠勝全日本プロレス大田区大会 三冠ヘビー級選手権試合)
「三冠戦で5分に満たないまでも満足感と緊張感に溢れる試合だった」
・8.26 曙vs大仁田厚(横浜大花火)
「試合前から想像力をかきたてられた。地上波にも取り上げられた」
・8.27 葛西純vsMASADA(FREEDOMS後楽園大会 デスマッチトーナメント決勝戦
「絵的にみて今年最もインパクトがあった。どの瞬間も凄かった」
・7.1 中邑・オカダ組vs諏訪魔・近藤組(新日本全日本創立40周年記念両国大会)
「今のそれぞれの立ち位置、意地の張り合いが良い緊張感を生んだ」
・11.19 田中将斗vs石井智宏(新日本NEVER初代無差別級トーナメント準決勝)
「石井選手の頑張りが素晴らしかった。彼を評価したい」
・11.23 KENTAvs杉浦貴(NOAH後楽園大会 GL決勝戦
「緊張感の中でKENTAが結果を残した」
・10.27 菊田早苗vs桜木裕司GRABAKA ディファ有明大会)
「桜木がプロレスラーの頑丈さと強さを体現した。フィニッシュは衝撃的」
・8.9 ケインvsダニエル・ブライアン (WWE スマックダウンツアー両国)
WWEのツアーの中で最もいい試合だった。あの地味でおとなしかったブライアンが満場の客を沸かせていた」
・12.31 桜庭・柴田組vs鈴川・澤田組(元気ですか!大晦日2011)
「緊張感と、お互いのファン同士の殺気がすごかった」

なんとエントリー試合が全14試合! IWGPヘビー級選手権からグラバカWWE、電流爆破、デスマッチまでこの幅の広さよ。

1回目の投票では
6.16オカダvsタナ 6票
曙vs大仁田 5票
飯伏vsケニー 3票
中邑・オカダ組vs諏訪魔・近藤組 2票
棚橋vsみのる、2.12タナvsオカダ、ケアvs諏訪魔、桜木vs菊田、桜庭・柴田組vs鈴川・澤田組がそれぞれ1票
という結果になり、上位3試合に絞って更なる議論の末、決戦投票に。

飯伏vsケニーに関しては
DDTが武道館に進出したことも合わせて評価したい」
「いや、団体の評価と試合の評価は別物だ」
「確かに身体能力も凄いけれど悪い言い方をすれば一発芸の試合だ」
「しかしオカダvs棚橋はこの先何度も見られるかもしれないが、この試合は2度と見られないだろう」
「この試合を評価してしまうと結果的にまた死人が出るのではないか」
「危険なことをするから死人が出る、というのは議論のすり替えだ。必ずしも危険な技の結果としてリング禍が起きるわけではない」
「この試合をベストバウトにすることでプロレス界全体がこういう方向に向かうのではないか」
「誰にも真似ができない以上、プロレス界全体の流れにはならないだろう」
「撮影していて、何が起きるかわからない、予想が全くできなかったので面白かった」
といった議論が。確かに凄いんだけれど、これをベストバウトとして認めていいのだろうか、というただその一点が焦点となりました。

決選投票の結果、
飯伏vsケニー 8票
6.16オカダvs棚橋 12票
曙vs大仁田 1票

となり、2度目のオカダvs棚橋、つまり棚橋選手がオカダ選手からベルトを取り返し、歓喜の涙にくれた大阪での試合が今年のベストバウトとなりました。毎年、そのクオリティの高さゆえ複数の試合がノミネートされ、結果的にベストバウトを取り損ねていた棚橋選手がようやくこの賞を手にすることができた。おめでとうございます。

そして、飯伏vsケニーに関しては、個人的にはこの試合がベストバウトに選ばれることで歴史に刻まれ、後々にも思い出される試合であって欲しいと思っていたことも確かです。でも、予想されていたことではあったけれど、議論を呼ぶ試合でもあったことも確か。いろいろな意味で、記憶に残る試合となりました。

◎最優秀タッグチーム賞
ここ数年、何かと議論を呼ぶ最優秀タッグ。今年も選考会前から非常に難しい選考になるのではと言われていました。特にメジャー団体では固定のタッグチームが少なく、タッグの権威が落ちているのでは。そういう警鐘も選考会で毎年鳴らされてます。

GET WILD(大森・征矢組)
「年間を通して活躍し、全日本ファンを入場から喜ばせた」
「両選手とも器用なタイプではないが、タッグになることで力を発揮した」
・桜庭・柴田組
インパクトは絶大だった。ファンを本気で怒らせた」
「殺気のある柴田の魅力が再認識された」
「新日本にストロングスタイルを取り戻した」
バラモン兄弟
「生まれた時からのタッグチーム。めちゃくちゃもやるけれど、どんな試合形式でもどんな相手でも確実に沸かせる試合をする」
「実力が認められてアジアタッグにも挑戦した」
・ジミーズ
DRAGON GATEの中で一番安定感のあるユニット。元々本当に地味で、罰ゲームから始まったのにファンの心を掴んだ」

ご覧の4チームが推薦されました。最初の投票で
GET WILD 8票
桜庭・柴田組 4票
バラモン兄弟 3票
ジミーズ 6票

という結果になり、上位2チームである GET WILDとジミーズで決選投票に。

GET WILD 13票
ジミーズ 8票

となり、今年の最優秀タッグチームはGET WILD大森隆男・征矢学組が受賞することになりました。おめでとうございます!どうか授賞式もワイルドな出で立ちでいらして下さい!

◎殊勲賞
個人賞としてはMVPに次ぐ賞という位置づけの殊勲賞です。

・アブドーラ・小林
「今年1年、デスマッチヘビーのベルトを巻いて頑張った。彼は努力の人だ」
森嶋猛
「先にも出たがケガ人相次ぐNOAHでひとり気を吐きベルトを守った」
・KENTA
「ファンの期待値を背負って、常に問題提起し続けた。GL最終戦のvs潮粼戦、vs杉浦戦の勝利は殊勲の星に値する」
高木三四郎
「選手としての評価はされづらいが、団体をここまで引っ張り、今年唯一の武道館大会を成功に導いた。メジャーに対して殊勲の星を挙げたといっていいのでは」
船木誠勝
「三冠ベルトを秋山から最短距離で取り返した。10年前だったらあり得ない顔合わせのカードで勝ち、ベルトを守り続けている」

投票の結果、
アブドーラ・小林 3票
森嶋猛 13票
KENTA 1票
高木三四郎 1票
船木誠勝 3票

となり、過半数を獲得した森嶋猛選手が今年の殊勲賞となりました。GHCの連続防衛記録を重ね、防衛した暁には毎回面白い場所で豪快な一夜明け会見をし、決して明るいニュースばかりではなかった団体を「ヤル気、元気、モリシ!」でもり立てた森嶋選手、本当におめでとうございます。

◎敢闘賞
敢闘賞です。敢闘した人です。頑張った人です。

・アブドーラ・小林
「彼こそ敢闘に相応しい。昨年12月に伊東竜二から獲ったデスマッチヘビーを7度に渡り防衛し、毎回追い詰められながらも勝利を収め、マイクでお客さんを楽しい気持ちにさせて帰す。彼の人柄だ」
・CIMA
「ベテランでありながら団体を年間通して引っ張った。やはりCIMAあってのドラゲーだ」
柴田勝頼
インパクトは絶大だった。お客さんを本気で怒らせた。桜庭という先輩といながら、タッグチームではリーダーとして引っ張っている」
後藤洋央紀
「今年は結果は出なかったけれど、試合内容はIWGP、インターコンチ、G1全て素晴らしかった。MVPのオカダから唯一2回フォールを奪っていることも評価したい」
大仁田厚
「曙、初代タイガーとの試合など、何も話題がないところに熱さを生み出し、そしてそれを見事に引っ張った」

1度目の投票では
アブ小 9票
CIMA 6票
柴田勝頼 1票
後藤洋央紀 2票
大仁田厚 3票

となり、上位2名による決選投票が行われることに。
アブドーラ小林選手に関しては、
「デスマッチ初心者でも彼の試合なら安心して見られる。特訓シリーズも面白い」
「ただデスマッチをやっているから偉い、努力している、というのはおかしい」
CIMA選手に関しては
「ビッグマッチ、観客動員数がやはりドラゲーはもっと評価されるべきだ。そしてそのドラゲーを守っているのはCIMAだ」
といった意見が。

決選投票の結果、
アブドーラ・小林 14票
CIMA 7票

となり、アブドーラ・小林選手が敢闘賞に選ばれました。MVPじゃなかったけれど、立派な個人賞です。おめでとうございます!1年間血を流し続け、愛を叫び続けた努力が認められての受賞です。昨年は受賞パーティでも肩身が狭そうで、MVPの棚橋選手の後ろから遠慮がちに「愛してます」ポーズをやっていたアブ小選手。今年は堂々と、小鹿さんの言葉を借りるなら「ヒタチを決めて(参照)」金屏風の前に立って欲しいと思います。

◎技能賞
優れた技能を持つプロレスラーに与えられる、技能賞です。

・CIMA
「オリジナリティ溢れる技はもちろん、マイクの技能も素晴らしい」
中邑真輔
「あのくねくねと言われる動きを完全に自分のモノにした。相手を光らせ、そして自分も光る。レスラー仲間からも評価される技術の高さ」
「ここ数年試合内容も素晴らしいのに、彼が新人賞以来全く賞を獲っていないのはどう考えてもおかしい。あの言語センス、オリジナリティ溢れる動き、それはプロレスラーとしてのスキルの高さだ」
矢野通
「ヒールは技能だ。CHAOSの中心人物である」
アントーニオ本多
「彼の試合は常に面白いし、ハズレがない。日本のサンティーノ・マレラになれる存在だ」
船木誠勝
全日本プロレスに新しい風を吹かせた。完全にプロレスラー船木になった」

1度目の投票では
CIMA 6票
中邑真輔 8票
矢野通 1票
アントーニオ本多 1票
船木誠勝 5票

となり、上位3人で改めて決選投票が行われることに。
ところがその結果、

CIMA 6票
中邑真輔 9票
船木誠勝 6票

となり、上位2名での決選投票に進むこともできなければ、誰も過半数を取ることもできない。何度投票してもこの結果は変わらず、それぞれの推薦理由もはっきりしているので、譲らない。こんなことは私が参加してからは初めてでした。こんなことってあるんだなあと思いました。

話し合いの結果、第1回の投票の結果が船木選手より勝っていたCIMA選手を残して、2名による決選投票を行うことになりました。その結果、

CIMA 9票
中邑真輔 12票

となり、中邑真輔選手が2003年の新人賞以来、実に9年ぶりに東スポプロレス大賞を受賞することになりました。遅すぎるくらいです。ここ数年、名前が挙がっては獲り逃がしていた中邑選手。彼の技能が評価されたことに、賛辞を送りたいと思います。

◎新人賞
デビュー3年以内、と言われている新人賞ですが、今年は更に明確に、「※2009年12月11日以降にデビューした選手が対象となる」という但し書きが付けられました。

橋本大地
「デビューして2年で200試合、怪我もせず頑張った。身体もかなり大きくなり、度胸も付き、コメントでも自分の言葉で話せるようになった」
中之上靖文
「オーソドックスな試合運び。大技に頼らない試合は好感が持てる」
・谷崎なおき
「改名してからの勢いは素晴らしい。試合運びも巧い」
・夕陽
小林聡日高郁人を師匠に持ち、度胸もある。飛び技も蹴り技も的確」

投票の結果、
橋本大地 15票
中之上靖文 2票
谷崎なおき 2票
夕陽 2票

となり、圧倒的多数で橋本大地選手が2年目にしてようやく、新人賞を手にすることが出来ました。
昨年、大方の予想を覆し、新人賞を獲り逃がした橋本大地選手。ご本人と、それからプロレスラー大谷晋二郎の悔しさはいかばかりだったか。しかしそれにくさることなく、この1年彼は精進し続けた。大きい大会だけでなく、チャリティーやお祭りの試合にも参加し、NOAHや大日本のリーグ戦にも参加し、経験を積み重ねた。もちろん彼は今でも「橋本真也の息子」であるけれど、立派なひとりのプロレスラー「橋本大地」として自信を持って歩み続けている。それが評価されて、本当に良かったです。

去年、大地選手が新人賞を獲れなかった時、大谷晋二郎選手と交わした言葉がありました。そのことについてはいずれ、書きます。

女子プロレス大賞
09年のさくらえみ選手が6年ぶりの女子プロレス大賞で、それから毎年途切れることなく受賞者が続いている女子プロレス部門。受賞した時に彼女が言った、「また該当者なしに戻るのが一番いけない」という言葉が、いったいどれだけ女子プロレス界全体に届いているだろうか。ちょっと危惧していたことは事実です。

・旧姓広田さくら
「どんな団体のどんな会場でも沸かせるキャラクターがある」
紫雷美央
「男子も含めたくさんの団体に引っ張りだこ。自らの発信力がある。」
「カラテバラモンとのキワモノ試合もやってのける」
里村明衣子
「サンプラザ仙台や新潟大会を成功におさめた。地方で地道にやっている彼女をきちんと評価してあげたい」
愛川ゆず季
「去年の受賞におごることなく今年も努力し続けた。レフェリーの和田京平さんも認めている」
「自分のアイドル性に甘んじることなく、強さを求める姿勢がいい」

投票の結果、
広田さくら 2票
紫雷美央 5票
里村明衣子 1票
愛川ゆず季 13票

となり、何と2年連続で愛川ゆず季選手が女子プロレス大賞を受賞しました。これは凄いことです。女子プロ大賞を2年連続で受賞した選手がこれまでいないのはもちろん、男子を含めても2年連続で個人賞を受賞したことがあるのは80年代の天龍・鶴田時代に遡ります。それほど、多様化した現在においては連続受賞が難しいのです。
それともう1つ。かつては女子プロレス大賞は、限られた選考委員だけが投票する賞でした。それが今は多くの委員が女子プロ大賞の議論にも参加し、票を投じるようになっています。女子プロレスを巡る環境も、変わりつつあるのです。

この他、東スポから坂口征二さんに長年の功労を称えて特別功労賞を。ロンドン五輪のアマレス金メダリストにレスリング特別表彰を贈ることへの了解があり、今年の選考会議は閉会しました。午後1時から始まった会議も気づけば午後3時になっており、例年以上に白熱した会議となりました。

以上の皆さんが、2012年を代表するプロレスラーです。受賞された皆さん、本当におめでとうございます。あなた方が、私たちの愛するプロレス界の代表です。どうかこれからも、素敵な夢を見せ続けて下さい。

そして受賞ならなかった皆さんも、同じように誇るべき私たちの憧れのプロレスラーです。今年の選考会議に挙がったプロレスラーの名前を見て下さい。メジャーだから、インディーだから、若いから、ベテランだから、ストロングスタイルだから、デスマッチだから、そんなのもう関係ない。凄いものは凄いと、素直に認められる時代です。みんなが胸を張っていい時代です。

2013年も皆さんのこころざしが隅々にまで届きますように。そんなリングに上がる皆さんのこころざしを受け止められる、私たちでありますように。

 小沢健二ひふみよコンサートツアー

sayokom2010-06-09

小沢健二の「ひふみよ」ツアー6.9NHKホールに行きました。思えば今年の頭にいきなり起こされて「オザケンがツアーやるって!」と家人に言われた時には、「いったい何をとんちんかんなことを2010年にもなって言っているんだろう」と全く理解出来なかったものです。余談ですが、我が家では重大ニュースはたいてい、私より早く起きている連れ合いによってもたらされます。草○くんの時にもMJの死の時にもそうだった。

情報はこのライブツアーのためにつくられたひふみよというサイトからだけもたらされ、この中の読み物を読んでみても、ここ10年の小沢健二について伝わってくる情報から何ら変わるわけでもなく、曰く環境運動に専念しているらしいとか、アンチグローバリゼーションだとか、とにかくめんどくさそうな話ばかり。ただ、「LIFE」の頃の曲をライブではやる、と本人も断言しているのであの一番キラキラしていた頃の、絶対王子時代のオザケンの曲がライブで聴けるというのは素晴らしいことであり、それは何は置いてもいかなくてはならない。

で、抽選で当たったチケット握りしめてNHKホールに行ってまいりました。公園通りを上がるとだんだんとボーダーシャツを着ている人の割合が高くなります。まあくるりの時のメガネ率ほどは高くないけれど、それにしたってみんな物持ちがいい。私はタンスの中を引っかき回しましたが残念ながらボーダーシャツはもう1着もなかった。

ここからは、これからライブに行く方は読まない方がいいと思います。ただ、絶対に、開演時間までには会場に入って下さい。遅れるとしばらくホールに入ることは不可能になるので、万難を排して開演に間に合わせることをお勧めいたします。

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