正義は必ず勝つ、負けたら?

©春場ねぎ・講談社/『戦隊大失格』ザ・ショー製作委員会


「戦隊大失格」ザ・ショー のゲネプロを取材させて頂いた。少年マガジンで連載中のコミックスの舞台化で、なんといっても戦闘員F役で新日本プロレスのエル・デスペラード選手が舞台初出演なのだ。

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新日本公式のインタビューによると、そのきっかけはあのデスペラード選手の主催興行「DESPE-invitacional」だったという。その試合紹介のナレーションを担当したデスペ選手の語りが魅力的だったことから今回の出演に繋がったそうだ。アクションではなく、声がきっかけ、というのに大変驚いたのだが、確かにデスペラード選手の声はとても深みがあり、表現力が豊かだ。

 

久々に訪れたシアターGロッソは舞台の天井が3階分もあってとても高い。ゲネプロ前に行われた出演者のインタビューでは、皆さんが口々に「みんながケガなく千秋楽を迎えられるように」と話していらしたのが印象的だった。誰もケガせずにシリーズ完走できますように、と願うプロレスと同じなんだな、と思う。

 

実際の舞台が始まると、みな同じ全身が隠れている衣装の戦闘員の中でもひときわ身体が大きい戦闘員F。アクションも台詞もたくさんあって、その語りがやはりとてもいい。そしてデスペさんがこれを言うんだ、という台詞の数々。

 

物語の中で連呼される「正義は必ず勝つ」という言葉、ならば負けることは即ワルモノなのか、ワルモノは負けなければいけないのか。正義の窮屈さ、正しさを繰り返されることの圧迫感など、考えさえられることがたくさんあった。と書くと堅苦しいけれど、あの高さを存分に生かした立体的なアクションや歌に踊り、演出の数々はとても見応えがあ。演者さんたちもお芝居にアクションに歌に踊りに、皆さん本当に多才で魅力的だ。

 

先のインタビューで一番印象的だったのは、デスペラード選手のこんな言葉だった。

 

「なにかを盗んでやろうとかも正直一個もなくて、(舞台を)全力でやらないと失礼でしかない。持って帰ろうっていうよりは、やったことが結果、自分のプラスになることがあるんでしょうけど、これを持ってプロレスに帰って、これをプロレスで役に立てようっていう発想はいまのところ一個もないです。」

今回の経験をプロレスにフィードバックしようとは今のところ全く考えていない、というデスペラード選手の言葉に気づいたことがあった。芸能人がプロレスのリングに上がる時、例えば武知海青さんがDDTのリングに上がった時に「この経験をTHE RAMPAGEに生かしますか?」とは誰も聞かなかったと思うし私もそんなことは考えもしなかった。プロレスのリングに上がる時はプロレスを、ステージに上がるときにはそのステージを全力でやる。それだけのことだ。

だからこそ、戦闘員Fとしてのエル・デスペラード選手のことをぜひ舞台で見て欲しい。9月16日まで、シアターGロッソでデスペさんと握手、は出来ないけれど、戦い悩み生き抜く戦闘員さんたちが待ってます。

©春場ねぎ・講談社/『戦隊大失格』ザ・ショー製作委員会

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