プロレスリングBASARA9.11新宿大会


プロレスリングBASARAの興行に行くのは楽しい。まず、お客さんがとても楽しそうだ。新木場で行われている「宴」というシリーズはお酒飲み放題なので、それはもう盛り上がる。コロナ禍を経て通常の興行が開催できるようになってもなかなかお酒を飲みながらの興行は難しく、ようやく2023年8月29日に3年5ヶ月ぶりに「宴」が再開した時の盛り上がりは凄かった。全員でイサミ選手の入場曲「不死身のエレキマン」を大合唱した時にはなんだか涙が出そうだった。

ベテランと若手、ハードヒッターとハイスピード、努力家と鬼才がいる。中でも私がBASARAをBASARAたらしめている存在だと思っているのが風戸大智選手で、身体能力を予想外の方向でいつも使い切っている。あのカズ・ハヤシ選手も「プロレス界の宝」と褒めていたが、プロレスのセオリー、もっというと常識からかけ離れた動きをするので、初めて対戦する選手は毎回困惑する。前回の宴では2AWが誇る正統派のチャンピオン、吉田綾斗選手が風戸選手とシングルマッチだったのだが、全く噛み合わずに「何が正解なのかわからん」と困り果て、付き合っていられないとばかりにその強さを発揮したらヒールの時だってないくらいの大ブーイングを浴びた。そういう風戸選手の試合を見るのが好きだ。

この日は4wayタッグに登場した風戸選手、自分以外の選手が輪になって回るなかダイブする5秒前

9月11日水曜はBASARAにとっては珍しい新宿FACE大会で、塚本拓海選手のデビュー15周年、中津良太選手の10周年の周年祭だった。第1試合から新人選手の井上彪流選手がイサミ&関根組の洗礼を受け、第2試合にはBASARAもう一人の鬼才、ジュードーマスターが阿部史典選手を困惑させ、第3試合の4wayタッグにはSOSが登場。ツトム・オースギ&バナナ千賀のSOSはキャリアでいったら今年ちょうど20年(!)、ベテランといっていい存在だけれど、変わらないそのスピード、洗練されたタッグワークにいつ見ても惚れ惚れする。SOSのお二人はBASARAのレギュラーで、それぞれシングルでもBASARAのタイトルマッチで記憶に残る試合をされている。

この日の第4試合はUWAタッグ選手権で、王者関札皓太&梶トマト組vs挑戦者中野貴人&神野聖人組。関札&梶のハイテンションパーティボーイズも大好きなタッグチームで、その名の通り入場からめちゃくちゃハイテンションなのと、ハイスピードなのと、ハイクオリティ。その速さ巧さに若い挑戦者チームが食らいついて、最後は中野選手が関札選手から勝利をもぎ取った。この中ではひとりヘビー級の神野選手は試合後に「酸欠になりそうだった」と漏らしていたけれど、よくあの動きに付いていったと思う。大きくて力持ちの神野選手と、小柄で小気味よい中野選手。DDT両国のダークマッチで初めて組んでから5年、ケンカもせずに仲良く「愛人タッグ」としてやってきた。これからたくさんのチャンスがあるといいなと思っている。

セミファイナルは塚本選手の15周年で、相手として選んだのは伊東優作選手だった。見た目、というかフォルムがそっくりで、選手でもリング上で一瞬見間違うという。ちなみに竹田誠志選手のお嬢さん、にこちゃんは伊東優作選手の大ファンで、塚本選手の写真を見ると「違う」と言うんだそうだ。なかなかの強面好きだ。

新宿FACEではなかなかないハードコアマッチで、椅子や一斗缶が飛び交ってはスキンヘッドに激突し、見ているお客さんがみんな痛そうな顔をしている。蛍光灯で頭を殴られる経験はないけれど、机や椅子の角に頭をぶつけたことがある人は多いから、もちろんハードコアマッチの痛みはその何十倍もあるけれどなんとなく想像はできる。

一方、メインイベントは中津良太選手の10周年。中津選手がもう10年とは! DDTの若手プロジェクト、DNAでデビューした時、最初から大人びていたし、戦い慣れていた。そんな中津選手が選んだ相手は、かつて同じユニット、スパーキーで組んでいた、谷嵜なおき選手。谷嵜選手もちょっとやんちゃなイメージがあるので、今回の記念試合は15周年の塚本選手が自分の弟分と、10周年の中津選手は兄貴分を選んだんだなと感じた。

そんな気心知れた兄貴分と心ゆくまで殴り合って、極めあって、頭突きし合って、決着は付かなかったけれど中津選手は楽しそうだった。中津選手はデビューから10年間、一度もケガで欠場したことがないんだそうだ。それは本当に大切なことで、どうかこれからもケガなく、やりたいことが続けられますように。そして私はもちろん仕事なので飲めないけれど、BASARAファンのお客さんがこれからも美味しいお酒が飲めますように。