2023年1月のサムライTV新春特番のゲストは、ウナギ・サヤカ選手と鈴木みのる選手だった。その時がほぼ初対面だったにも関わらず、お二人はなんとなく波長が合ったようで、番組が終わった後はどういう話の流れだったか1989年3月に愛知県で行われた伝説の第1試合、アントニオ猪木vs鈴木実の動画を鈴木さんの解説付きでウナギ選手と豊本明長さんと一緒に見るという贅沢な時間をご一緒させて頂いた。
9月2日、自身の誕生日に今年1月に次いで2度目の自主興行を行ったウナギ選手。1月には対戦した鈴木みのる選手と、今度はタッグを組んでハードコアマッチに臨んだ。鈴木選手についてウナギ選手は「唯一の仲間かな。根っこの部分が同じ気がする」と評していた。わかるわかる、とはなるべく言わないようにしているけれど、なんとなくわかるような気がする。団体に頼らず自分で可能性を切り開いているところ、アイデアとその実行力、しかもそれをビジネスとして成立させているところ、情の深さ。
今回の興行も試合はもちろんのこと、それ以外でもウナギ選手がみんなを楽しませたいと用意した仕掛けが満載だった。1月の大会でもびっくりした、お客さんには見えないところのおもてなしが、今回はガンプロの大家選手とまなせ選手のお料理に更にグレードアップ。ホールのお祭り仕様も豪華で、ちゃんとお金がかかっている。
この日も結局ほぼ3試合出た形になったウナギ選手は、最後の最後にハードコアで血まみれになった。鈴木みのる&ウナギ・サヤカ組vs葛西純&藤田ミノル組、当たり前のように自分以外は全員男子プロレスラーの中に入って、しかも慣れないハードコアでの試合でぼろぼろになったけれど、あの葛西選手から「自分の足で立ってこそお前の祭り、メインイベンターとしての役割だろ?」と言われて立ち上がり、来年4月26日の両国国技館大会を宣言したのだ。
バックステージで鈴木選手から「一緒に世界に行こうぜ」と言われて「でもウナの夢は世界じゃなくて日本で圧倒的一番になること」と答えたのが印象に残っている。一緒に世界に行こうなんて言われたら嬉しいに決まってるし、ありがたいし誇らしいし、しかもその相手は大先輩でプロレス王の鈴木みのるだ。その場の勢いで「いいね!」と言ってしまいそうなところを、そうじゃないんだ、と言うのがウナギ選手らしいなと思った。
1月7日の試合後にも「自分はスターじゃなくて、スーパーヒーローになりたい。プロレスは誰かを蹴落とすものではなく、全ての人を救えるものだと思うから」と話していたのが強く印象に残っていて、競争が激しい世界を生き抜いてきたウナギ選手が、誰かを蹴落として自分だけがいい思いをしたいんじゃないんだ、そんなつもりでプロレスやってるんじゃないんだ、と訴えていたのが心に響いたし、スターとか、今回の世界進出とか、うっとりするような言葉に雰囲気で乗っかってしまわないところに強い信念を感じたのだった。
そんなウナギ選手だからこそ、東京ドームなんて言葉を勢いで口にしたのではないだろうから、本当にもしかしたらもしかしてしまうかもしれない。「お金があってもダメなんです、信用もないと」とウナギ選手は話していたけれど、後楽園大会に関わった人たちの数を思い返せば、それだけの人たちと信頼関係で結ばれているということだ。あとはとにかく、身体を大事にして欲しい。あと10年もやるつもりはない、と言っていたけれど、ケガなく、悔いなく、女子プロレスラーウナギ・サヤカをやり切って欲しいと思っている。