ガンバレ☆プロレスには青春のほろ苦さがある。デビューしたばかりの若い選手からキャリア20年を越える選手まで、みんないつも少しずつ悔しい思いをして、それを隠すことなくさらけ出す。そして汗と涙にくれながら、最後はみんなで足を踏みならし大きな声で叫ぶ。一生、青春のただ中にいる人たちだ。
9月23日の横浜ラジアントホール大会は通常の大会としては久々だった。8月の新木場大会が台風で中止になったからだ。私も久々のガンプロだったけれど、みんな元気で、いつも通り熱くて、嬉しかった。
第1試合は中村宗達&川上翔大の「市川少年愚連隊」と、FREEDOMSで暴れ回る政岡純&ガイア・ホックスの「F-SWAG」のタッグマッチ。中村&川上は幼なじみで、中村選手のデビューがきっかけで川上選手もプロレスラーを志したという、これが青春じゃなくて何なんだという物語だ。そんな初々しい二人が、ちょっと悪くて巧くてカッコいいお兄さんたちにリング上で翻弄される。余談だがガンプロには「翔太保存の法則」があるのではないかと思っていて、というのもあの翔太選手がガンプロからフリーになったのと入れ替わるように川上翔大選手がデビューしたからだ(漢字はちょっと違うけれど)。市川少年愚連隊、ガンプロ内外でたくさん揉まれて、経験を積んで、二人で一緒に走っていって欲しい。
中村・川上のヤングガンバレ同級生コンビは『岸和田少年愚連隊』から拝借して『市川少年愚連隊』と名付けました。
— 今成夢人Yumehito Imanari (@yumehitoimanari) 2024年7月16日
二人の写真からサイズ感も含めて圧倒的に「ナインティナイン」感が漂います。
チーム名が定着したらいいなと思います。
さしずめ私は井筒監督です。#GanPro pic.twitter.com/FzZHb1H4Sq
まなせゆうな選手を見るといつも本当に元気になる。そしてまなせ選手はいつも愛に溢れている。団体に、後輩に、対戦相手に、その愛はいつも惜しみなく注がれる。その愛はきっと、見返りを求めない愛だ。私も会場でまなせ選手に声をかけてもらいたくてガンプロに行っているところも正直ある。そんなまなせ選手は今日、ガンジョで大会のメインを張りたいと訴えた。ガンジョ、つまりガンバレプロレス女子部はガンバレ☆プロレスのとても大切な構成要素で、ファンもたくさんいるのに、大会の前半でなんとなくまとめられるのは悔しいと彼女は訴えた。もっともな要求だと思う。ガンプロの選手たちはみな平等で、男子だから、女子だから、という区別や差別は私の知る限りないと思うけれど、試合順となるとなかなか残酷だ。そして今日の大会中に、渡瀬瑞基&入江茂弘の持つ、スピリットオブガンバレタッグ王座にまなせゆうな&YuuRIで挑戦することが決定した。
メインは石井慧介選手のスピリットオブガンバレ王座に、和田拓也選手が挑戦した。プロレスの申し子のような石井選手と、格闘技出身の和田選手。ガンプロのリングでなければなかなか考えられないタイトルマッチだ。格闘技の世界から来た選手が持つヒリヒリした緊張感。グラウンドに誘う和田選手に応えない石井選手。逆に場外へと誘う。かと思えば、グラウンド状態の和田選手にいきなりサンセットフリップ! そういえばサムライ開局間もないころ、あの高田延彦vsヒクソン・グレイシーという対戦が決まり、プロレス記者や格闘技雑誌記者と試合の行方をうらなう討論会を大真面目にやったことを思い出した。
そうはいってもここはプロレスのリングだ。そして和田選手も、今はプロレスラーとしてこのリングに上がっている。腕を極め、足を極め、試合終盤には中学時代からの盟友、今は亡き青木篤志選手の得意技だったアサルトポイントで勝負を決めに行ったけれど、最後は石井選手の高角度ダブルアームDDTに沈んだ。石井選手はこのダブルアームDDTといい、今日は2で返されたけれど相手を空中で180度回転させる胴回し回転ボムといい、さすがプロレスを長年研究し続けているだけあってオリジナリティが高くえげつない技をいくつも持っているのに、かっこいい名前をつけようという気がまるでないのがらしくて良い。トルネードなんとかとか、サンダーなんとかとか、そういうことにこだわりがないのだ。
こないだのタイトルマッチで食らったけど、凄い発明だし威力的にもフィニッシャーにしていい技だと思う。
— 勝村周一朗 (@shu_katsumura) 2024年6月6日
ただどの技を見てもわかる通り、石井ちゃんには絶望的にネーミングセンスがない...。#GanPro #我らが王者 https://t.co/Cf3zIH8OgE
今日も楽しかったな、と思って外に出たら驚くほど寒かった。ガンプロの熱さに夢中になっていた間に、どうやら外は秋になっていたようだった。