戦場の巨大深海生物 〜プロレスリングBASARA9.24新木場大会

 

プロレスリングBASARAの新木場大会はこの夏から、1ヶ月に2回行われている。どちらも飲み放題の「宴」というスタイルなのだが、蒼宴、といういつものBASARAと、緋宴、というハードモードの2つのスタイルに分けられることになった。で、24日に行われたのが緋宴の、ハードスタイルの方の大会だ。緋宴には前回私が書いた

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風戸大智選手やジュードーマスターのようなトリックスターはいない代わりに、大日本プロレスの神谷英慶選手やTTTのガッツ石島選手のようなスーパーヘビー級が登場し、舞浜まで吹っ飛ばすくらいのショルダータックルを見せてくれる。凄すぎて笑ってしまう。

そんな中で今日、第3試合に組まれたのが今成夢人&渡瀬瑞基vs中津良太&リル・クラーケンというタッグマッチ。戦前にそうとはうたわれていなかったが、この4人の熱量によって一気にこの試合はガンプロvsBASARAの対抗戦になった。奇襲をしかけたはずの今成選手が一瞬にして中津選手のバットで100倍返しされる。場外でクラーケンが放り投げられている。

この4人のメンバーでただ一人、リル・クラーケンだけがキャリアが浅く、経験値が少ない。しかも、他の3人は明らかにケンカ慣れしているタイプのレスラーだ。渡瀬vs中津の元DNA勢は笑みを浮かべながら躊躇なく相手を殴り、今成選手は大声でBASARAファンを煽りながらストンピング。頑張ってクラーケン、勢いに負けないでクラーケン、と思いながら見ていた。

リル・クラーケン選手はマスクマンなのでもちろんその表情はうかがい知れないのだが、ふわっとしたつかみどころのないイメージがある(イカだけに)。去年12月3日の後楽園大会であのザ・グレート・サスケ選手をシングルマッチで破る大金星を挙げているのだが、当の本人は「勝ってしまった、嬉しいですけれど正直少し困惑しています」という謙虚にもほどがある感じだったし、今年の4月に藤田ミノル選手の持つユニオンMAXに挑戦した時も「栃木のおばあちゃんにベルトを見せたい」という心優しすぎる意気込みだった。試合はもちろん素晴らしかったのだけど。

そんな心優しい巨大イカ(なのに名前はリル・クラーケン)のマスクマンは、殺気だった今日の新木場のリング上で自分以外は全員血の気が多いメンバーに交じって必死で食い下がっていた。相手以上にパートナーであり先輩の中津選手が恐ろしくて、相手を殴るついでにクラーケンに活を入れる。「しっかりせんかい!」とクラーケンをモノのように相手に投げつける。しかし逆にケンカするのにこれ以上頼りがいのある先輩もいない。自分が頑張って繋げば、絶対に相手をボコボコにしてくれるわけだから。

クラーケン選手の試合終盤に相手のアゴを射貫くドロップキックは見事だったけれど、最後は今成選手の渾身のラリアットにBASARA組は敗れた。元はといえば同じDDTグループだったのに、見事にカラーがわかれたプロレスリングBASARAとガンバレ☆プロレス。近いのに遠い、遠いのに気になる関係だ。

8月の大会もそうだったけれど、緋宴の中心は中野貴人&神野聖人の愛人タッグで、メインはこれはBASARA勢同士のイサミ&関根組とのUWAタッグだった。若い2人が見事に防衛したら、なぜかそこに入ってきたのは高梨将弘選手。4年前の、藤田ミノル選手との物語がまた始まる。

直前まで下北沢のバカガイジン興行にいたという高梨選手、下北から新木場の移動はなかなかの距離